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虹やオーロラを彷彿(ほうふつ)とさせる神秘的な輝きが目を引く「ジュエリーグラス」。航空宇宙部品の製造などで培った技術を横展開した逸品で、一般消費者はもちろん、企業や官公庁からの注文が相次ぐなど、絶大な支持を集めている。
静岡県島田市に工場を構える日翔工業が、自社ブランド(「PROGRESS」)製品として手がける「ジュエリーグラス」。まず目を引くのは、虹やオーロラを連想させる神秘的な輝きだ。これを実現しているのが精緻を極めたコーティングの技術である。
ジュエリーグラスはガラス材の研磨・洗浄、純度99・9%以上という高純度チタンのガラス面へのコーティング、品質検査など、10にのぼる工程を経て出荷される。このチタンを、専用の機械や工具を駆使してナノレベルの薄さに磨き上げる。これにより、色鮮やかな光彩がグラスに宿るのだ。PROGRESSの責任者を務める小長井克久さんによると、「青と紫を表現する際の膜厚差は、わずか25万分の1ミリ」だという。
小長井博夫社長を中央に、左が小長井惠美子さん、右が小長井克久さん
株式会社日翔工業 | |
創 業 | 2010年7月 |
所在地 | 静岡県島田市東町2112 |
社員数 | 16名 |
利用システム | FX2クラウド |
昨年の東京インターナショナル・ギフト・ショー「LIFE×DESIGN アワード」で「ベスト匠の技賞」を受賞
赤ワインを注げば魅惑的な赤紫色が、ウイスキーを注げばまばゆい黄金色がグラスの中に一気に広がる。 「ジュエリーグラスを手に取られたみなさんが、光の反射が生み出す輝きに魅了されます」と、小長井博夫社長は製品の反響を柔和な表情で説明する。
主に全国の百貨店や自社オンラインショップ等で販売しており、単価は3850円~3万3000円(税込み)。ビアグラス、ロックグラス、お猪口(ちょこ)など、商品のバリエーションも豊富だ。贈答品としてのニーズも根強く、身近な人へのプレゼントはもとより、企業・官公庁の記念品にも採用されている。
「ある省庁から、『海外の政府関係者への贈答品としてジュエリーグラスを贈りたい』と依頼をいただいたこともあります」と小長井惠美子さんは補足する。
ジュエリーグラスの魅力は、その幻想的な見た目にとどまらない。「飲み物本来のおいしさを引き出す」という効果も特長の一つだ。
銅やアルミニウムといったチタン以外の金属製グラスの場合、飲み物を注いだ際に金属イオンが流れ出てしまい、独特の臭みが発生してしまう。一方、チタンの場合は金属イオンが流出しないことから、飲み物本来のおいしさや味の繊細さを感じ取ることができる。また、汚れやにおいが付着しにくく、衛生面においても優れた性能を持っているという。
「愛用者の方からは『ジュエリーグラスで飲むと味がまろやかに感じる』といった、風味をたたえるコメントが寄せられています。リピーターも多く、なかには当社まで直接買いに訪れる方もいます」(惠美子さん)
ジュエリーグラスが生む幻想的な色彩や輝きは多くの人を魅了する
霜を彷彿とさせるデザインが特徴のグラス(手前)も展開中
静岡県島田市にある自社工場でジュエリーグラスは生まれる
品質管理も徹底している。同社では工場にクリーンルームを設置し、ちりやほこり、細菌等が一切発生しない環境でジュエリーグラスを製造。従業員は白衣と帽子を着用したうえで、製品の加工や出荷前の検品作業を行っている。
「出荷前の品質検査を1個ずつ手作業で行っています。商品全体を厳しくチェックするため、これまで不良品を販売したことは一度もありません。また、購入後90日以内に破損した場合の無償交換サービスや、傷が付着した場合のメンテナンスサービスなど、購入後のフォローも手厚く実施しています」
そう克久さんが説明するとおり、同社では「Re:Project(リ プロジェクト)」を旗印に、SDGs(持続可能な開発目標)を念頭に置いたものづくりを展開。先述した二つのサービスに加えて、破損したジュエリーグラスを回収し、別の製品づくりに再利用する活動も行っている。
「ジュエリーグラスには『美しいに境界線はない』というコンセプトがあります。国籍や生育環境などにかかわらず、誰もが虹やオーロラに見とれてしまうように、『美しい』『きれい』と感じる価値観は万国共通です。当社は人種や性別などにかかわらず、お互いを認め合う『ボーダーレス社会』を、ジュエリーグラスを通じて実現したいと考えています。その一環として、2017年にグラスメーカーとしては世界で初めて、『ジェンダーレスブランド』を宣言しました」(克久さん)
このように、ジュエリーグラスには「社会課題を解決に導きたい」という同社の思いが込められているのだ。
「創業直後は工業製品の試作をなりわいとしており、特にガラス製品の表面処理を多く請け負っていましたが、受託加工一本ではいずれ収益が頭打ちになると、次第に危機感を抱くようになりました。このような理由から、コーティングの技術を生かした自社製品の開発に挑戦したのです」
ジュエリーグラスの展開を志した経緯を、小長井社長はこのように語る。
既述のとおり、同社の強みはチタン等の素材をムラなくコーティングする技術だ。小長井社長は、製品の製造や大学との共同研究等を通じて磨いてきたこの技術を横展開し、消費者向けのモノづくりを模索した。
小長井社長が続ける。
「内面までチタンでコーティングし、光の屈折を利用して発色するグラスは今まで見たことがありませんでした。そこで、グラスの内面にチタンをコーティングした試作品を、産業祭という藤枝市で開催された一般消費者向けの展示即売会に出品したのです」
来場者の反応は上々で、この日出品した商品は完売。手ごたえを感じた小長井社長は、ジュエリーグラスの商品化に本格的に着手した。
とはいえ、グラスはあくまでも飲み物を飲むための容器。鮮やかな外見が目を引くとはいえ、多くの消費者に支持される人気商品になるだろうか……。行き場のない不安が小長井社長をはじめ、開発に携わる社員たちに募り始める。
「ジュエリーグラスは当社の行く末を左右する一世一代の大勝負でした。これがダメだったら会社が終わってしまう……と、言葉にはしないものの、誰もがそう感じていましたね」(克久さん)
そんな同社の運命を決定づけたのは、産業祭の翌年に出展した東京インターナショナル・ギフト・ショーだった。
初出展にもかかわらず、「他に類を見ない美しいグラスがある」と、同社のブースには百貨店やセレクトショップのバイヤーたちが、ひっきりなしに訪れた。3日間でなんと350人超。惠美子さんをはじめ、接客を担当した社員は、休憩をとる暇もなく来客対応に追われたという。
「これは当たる――」
開発に携わった全員が、ジュエリーグラスの爆発的ヒットを確信した瞬間だった。
その後の反響は既述のとおり。ジュエリーグラスの躍進によって売上高も成長軌道に乗り、今や年商の9割超を占める看板商品となっている。
内藤良彦税理士事務所
静岡県藤枝市郡1-1-7
税理士 内藤良彦 監査担当 藤浪綾子
自社ブランドを武器に堅実な成長を遂げる
顧問先からの紹介がきっかけで、日翔工業さんの税務顧問に就きました。創業時からのお付き合いなので、今年で15年になります。
当時から、ものづくりに対して真摯(しんし)に取り組んでいる会社という印象でしたが、「ジュエリーグラス」を手がけるようになってからの成長には、目を見張るものがあります。1年半前には営業専任の担当者を新たに採用され、売り上げの拡大に拍車をかけています。
内藤良彦税理士
藤浪綾子監査担当
もともと高い技術力と独自の生産設備をお持ちでしたので、この結果は当然といえば当然なのでしょう。自社ブランドを展開している中小メーカーは地元でも稀有(けう)な存在ですから、日翔工業さんの取り組みは多くのものづくり企業の参考になると思います。
当事務所では月次巡回監査を基本業務としており、日翔工業さんへは毎月10日過ぎに訪問しています。巡回監査では証憑(しょうひょう)書類と仕訳を突合して前月の取引を精査した後、社長と経理担当である惠美子さんと面談し、売上高や経費を中心に最新の業績データを確認いただいています。直近の面談では、「ジュエリーグラス」の受注予定や今後の売り上げ予測などが話題に上がりました。
会計・請求業務では『FX2クラウド』を活用されています。もともとはピアツーピア接続をしていましたが、1年ほど前にクラウド版にアップグレードされました。現在もパソコン2台で運用されており、証憑書類を電子保存したり、請求書を電子発行したりするなど、クラウド移行を機に経理業務のデジタル化・効率化を実現されています。